むしゃくしゃして書いた。後悔なんてするわけがない。
2010年11月20日 日常 コメント (2) 四号棟。
会社で俺が働く――部屋みたいなものだ。
そこではいつも俺とHGWR主任の二人が仕事をしている。まあ、仕事の内容については割愛させて頂く。今回はそれが目的ではないから。
極たまに他の部署の連中が来たりするが、殆ど日中は無音。四号棟は二人で仕事をするのに少しだだっ広いからだ。
それに加えて、今日はHGWR主任が休み。つまりは俺一人。それが余計に静寂を醸し出している。
そんなこんなで今日も昼間。少し前に腹が「ぐう」となっていたから、かなり腹が減った。
広い空間に三つ四つある、大きな事務机。それに腰をおろしてテレビの電源を入れる。本当は社内で社員食堂以外のテレビ使用は禁止されているのだが、ここ四号棟の伝統のようなもので、隠しカメラ否、隠しテレビがある。
社員食堂に行けばテレビはあるのだが、何が悲しくて見たくないツラを拝みに赴かなければならないのだ。仲の良い友達と飯屋に行くなら大歓迎だが、社員食堂で偉そうなツラをして調子の良い事をほざく奴の隣に座り、くだらない世間話なんざ真っ平御免。
よって、俺は弁当派だ。
ガラガラ……
四号棟の扉が開く音が聞こえる。恐らく、NGS課長だろう。
いつも、HGWR主任、NGS課長と俺の三人で昼飯を食う。どうも俺達三人は話が合うというか、性格が似ているのかもしれない。
「ああ、休みだったね」
ポットから茶碗に湯を注ぐ、長身痩躯で黒いふちの眼鏡をかけた男。それがNGS課長だ。
「はい、今日は俺ら二人っすね」
言葉から察するに、HGWR主任の事だろうと思った俺は、そう答えた。
そういえば、俺とHGWR主任には毎日の日課がある。それは昼飯後の軽い運動、『キャッチボール』だ。今日はHGWR主任が休みだから出来ないのだが……
まあ、それは追々語る事にして。今日はNGS課長に訊きたい事があった。
「NGS課長」
「なんだ?」
「うちの部署、忘年会どうするんすか? っていうのは、俺が去年幹事やった時に、十二月の頭に指名されて、大変だった記憶があったんで。今からだと宿も取れると思うんすけど」
と言って俺は茶を啜った。猫舌な俺でも飲めるくらいに冷めていたから飲みやすい。日本茶の仄かな苦味が口に広がる。
「あー、宿が取れないんだよねえ」
それに俺は頷いてNGS課長の返答を待つ。
「でもね、それどころじゃなくなっちゃうかもしれない」
それどころじゃない? 予想外の返答に暫く呆気に取られる。
「生産部が大変みたいでさ。年末年始に人を貸せって言われてね。貸せる? じゃなくて貸せだから」
あれか。
まだ虫の息があったのか、あの話。
少し前に「なるかもしれない」程度の話を朝礼で聞いた。その時は話半分に聞いていたから、今NGS課長から言われると嫌に現実味がある。
「つまりは……忘年会どころじゃないと?」
「……そうだねえ。まだ誰になるかは決まってないけど」
馬鹿か。うちの会社は。
いや、それはかなり前から分かりきっていた事だが。
周りの会社は不景気でヒーヒー言ってる中、休日出勤だのなんだの言って大丈夫なのか? 今日も土曜日で出勤してるわけだが。オマケに今度は年末年始に働けだと? 馬鹿も休み休み言え。
と、俺は声を荒らげそうになりつつも、それを圧し殺す。大体、そうなった原因が分かるからだ。勿論NGS課長ではない。
「……またWWTAR部長っすか?」
「そう」
今度はNGS課長が茶を啜る。ゆっくりと飲み干すと、大きな喉仏がこくんと動いた。
WWTAR部長とは……うちの部署にいつも災害を齎す才能を持った、素晴らしいお方だ。
どうせ、上から貸せと言われて何も言えなかったのだろう。へこへこ頭だけ下げるのではなく、ガツンと言えば良いものを。それでいて自分の失敗を部下の仕業だと言う最低極まりない奴。下には大きい顔、上には小さい顔という分かりやすい人だ。
この間は、五十個売りが通常の物を一個辺り『百円』の利益しか出ない価格計算をしていた。当然、色々な人に突っ込まれていたが……それも人のせいにしていたらしい。
注文が沢山くれば良いだろうが、そんなに売れる物ではないし、ましてや注文があっても儲けが五千円。高校生の小遣いか。
このWWTAR部長が皆に嫌われるもう一つの理由が、小さな事に一々うるさい事だ。
少し前に俺の先輩、しのぶさんから聞いた話によると、有休申請を出した際に酷く問い詰められたらしい。別に有休は社員の持つ権利なのだから、普通は用途を訊いてはいけない。それを事細かに説明させられたらしい。申請を出すにしても、仕事の状況を見て出さなくてはいけないが、しのぶさんはその辺を考えないで出すような人じゃない。
俺にも似たような事が以前あったため、相槌を打ちながらこの話を聞いていた記憶がある。
そんなに奴の事を考えていても仕方が無いため、一息ついてからNGS課長に黄色いタッパーを差し出す。
「家で取れたラ・フランスっす」
「お。良いの?」
「少し前まで硬かったんすけど、最近柔らかくなって」
前にも家で作っている「さくらんぼ」を振舞った事があったし、NGS課長は果物好きだからお裾分けだ。
プルプルプル……
この音は……四号棟に設置された固定電話の内線。
俺は椅子から立ち上がり、踵を返して電話に向かう。こういった電話は、いわゆる「したっぱーず」(俺、しのぶさん、AKBさん)の仕事だ。
「はい、四号棟です」
坦々とした声で言う。いつも同じ口調で受けるので、これが板についてしまった。
「あ、丁度良かった。君か」
今、一番聞きたくない声が受話器越しに聞こえる。
WWTAR部長。
「なんでしょうか?」
とりあえず、平然と尋ねる。
「今度の生産部応援、君に決まっ(ry」
結末はご想像にお任せする。
ノンフィクションでござる。
早く一日が二十七時間にならないかな。
あ、もしくは「精神と時の部屋」を下さい。
会社で俺が働く――部屋みたいなものだ。
そこではいつも俺とHGWR主任の二人が仕事をしている。まあ、仕事の内容については割愛させて頂く。今回はそれが目的ではないから。
極たまに他の部署の連中が来たりするが、殆ど日中は無音。四号棟は二人で仕事をするのに少しだだっ広いからだ。
それに加えて、今日はHGWR主任が休み。つまりは俺一人。それが余計に静寂を醸し出している。
そんなこんなで今日も昼間。少し前に腹が「ぐう」となっていたから、かなり腹が減った。
広い空間に三つ四つある、大きな事務机。それに腰をおろしてテレビの電源を入れる。本当は社内で社員食堂以外のテレビ使用は禁止されているのだが、ここ四号棟の伝統のようなもので、隠しカメラ否、隠しテレビがある。
社員食堂に行けばテレビはあるのだが、何が悲しくて見たくないツラを拝みに赴かなければならないのだ。仲の良い友達と飯屋に行くなら大歓迎だが、社員食堂で偉そうなツラをして調子の良い事をほざく奴の隣に座り、くだらない世間話なんざ真っ平御免。
よって、俺は弁当派だ。
ガラガラ……
四号棟の扉が開く音が聞こえる。恐らく、NGS課長だろう。
いつも、HGWR主任、NGS課長と俺の三人で昼飯を食う。どうも俺達三人は話が合うというか、性格が似ているのかもしれない。
「ああ、休みだったね」
ポットから茶碗に湯を注ぐ、長身痩躯で黒いふちの眼鏡をかけた男。それがNGS課長だ。
「はい、今日は俺ら二人っすね」
言葉から察するに、HGWR主任の事だろうと思った俺は、そう答えた。
そういえば、俺とHGWR主任には毎日の日課がある。それは昼飯後の軽い運動、『キャッチボール』だ。今日はHGWR主任が休みだから出来ないのだが……
まあ、それは追々語る事にして。今日はNGS課長に訊きたい事があった。
「NGS課長」
「なんだ?」
「うちの部署、忘年会どうするんすか? っていうのは、俺が去年幹事やった時に、十二月の頭に指名されて、大変だった記憶があったんで。今からだと宿も取れると思うんすけど」
と言って俺は茶を啜った。猫舌な俺でも飲めるくらいに冷めていたから飲みやすい。日本茶の仄かな苦味が口に広がる。
「あー、宿が取れないんだよねえ」
それに俺は頷いてNGS課長の返答を待つ。
「でもね、それどころじゃなくなっちゃうかもしれない」
それどころじゃない? 予想外の返答に暫く呆気に取られる。
「生産部が大変みたいでさ。年末年始に人を貸せって言われてね。貸せる? じゃなくて貸せだから」
あれか。
まだ虫の息があったのか、あの話。
少し前に「なるかもしれない」程度の話を朝礼で聞いた。その時は話半分に聞いていたから、今NGS課長から言われると嫌に現実味がある。
「つまりは……忘年会どころじゃないと?」
「……そうだねえ。まだ誰になるかは決まってないけど」
馬鹿か。うちの会社は。
いや、それはかなり前から分かりきっていた事だが。
周りの会社は不景気でヒーヒー言ってる中、休日出勤だのなんだの言って大丈夫なのか? 今日も土曜日で出勤してるわけだが。オマケに今度は年末年始に働けだと? 馬鹿も休み休み言え。
と、俺は声を荒らげそうになりつつも、それを圧し殺す。大体、そうなった原因が分かるからだ。勿論NGS課長ではない。
「……またWWTAR部長っすか?」
「そう」
今度はNGS課長が茶を啜る。ゆっくりと飲み干すと、大きな喉仏がこくんと動いた。
WWTAR部長とは……うちの部署にいつも災害を齎す才能を持った、素晴らしいお方だ。
どうせ、上から貸せと言われて何も言えなかったのだろう。へこへこ頭だけ下げるのではなく、ガツンと言えば良いものを。それでいて自分の失敗を部下の仕業だと言う最低極まりない奴。下には大きい顔、上には小さい顔という分かりやすい人だ。
この間は、五十個売りが通常の物を一個辺り『百円』の利益しか出ない価格計算をしていた。当然、色々な人に突っ込まれていたが……それも人のせいにしていたらしい。
注文が沢山くれば良いだろうが、そんなに売れる物ではないし、ましてや注文があっても儲けが五千円。高校生の小遣いか。
このWWTAR部長が皆に嫌われるもう一つの理由が、小さな事に一々うるさい事だ。
少し前に俺の先輩、しのぶさんから聞いた話によると、有休申請を出した際に酷く問い詰められたらしい。別に有休は社員の持つ権利なのだから、普通は用途を訊いてはいけない。それを事細かに説明させられたらしい。申請を出すにしても、仕事の状況を見て出さなくてはいけないが、しのぶさんはその辺を考えないで出すような人じゃない。
俺にも似たような事が以前あったため、相槌を打ちながらこの話を聞いていた記憶がある。
そんなに奴の事を考えていても仕方が無いため、一息ついてからNGS課長に黄色いタッパーを差し出す。
「家で取れたラ・フランスっす」
「お。良いの?」
「少し前まで硬かったんすけど、最近柔らかくなって」
前にも家で作っている「さくらんぼ」を振舞った事があったし、NGS課長は果物好きだからお裾分けだ。
プルプルプル……
この音は……四号棟に設置された固定電話の内線。
俺は椅子から立ち上がり、踵を返して電話に向かう。こういった電話は、いわゆる「したっぱーず」(俺、しのぶさん、AKBさん)の仕事だ。
「はい、四号棟です」
坦々とした声で言う。いつも同じ口調で受けるので、これが板についてしまった。
「あ、丁度良かった。君か」
今、一番聞きたくない声が受話器越しに聞こえる。
WWTAR部長。
「なんでしょうか?」
とりあえず、平然と尋ねる。
「今度の生産部応援、君に決まっ(ry」
結末はご想像にお任せする。
ノンフィクションでござる。
早く一日が二十七時間にならないかな。
あ、もしくは「精神と時の部屋」を下さい。
コメント
ライシンです。
“また”大変(?)そうな事になってますね……。
ボクも以前いた会社の事なんですが……。
「ハイ、それじゃ、スケジュール配ります」
そう言って上司Mさんは、ボクを含むメンバー八人にスケジュールを配っていった。
全員に配り終わったのを確認すると、MさんはボクとUの顔を見て口を開いた。
「今回のメインプログラマーは、H君(ボク)とU君にやって貰います」
「はい」
ボクとUはそう答えた。
そして、ボクは視線を落として手元のスケジュール表にゆっくりと目を通した。
(!?)
疲れているのかな? と思って一息ついて、もう一度、スケジュール表に目を通す。
(……。やっぱりか)
ボクは周りに分からないように、溜め息をついた。
(さすがに、これはねーよ……)
スケジュール表に、ボクとUの名前は二つずつ入っていた。
これの意味することは、
(一日に、ボクが二人いることを前提に立てられたスケジュールか……)
ボクは顔を上げると、Uと目が合った。
そして、二人同時に溜め息をついた。
「それから、今月は、残業禁止です」
ボクの耳に、意味不明な言葉が届いた。
(今、なんて言った? あのヤロウ)
「えっと……なんで残業禁止なんですか?」
Sさんは、ボクを含め、みんなが気になっているだろう事を聞いてくれた。
「ソレは、今月が三月だからです」
(……それだけか? 要は、稼動を下げろと)
「休日出勤も禁止ね。来月からは稼動をガッツリ上げるから、そのつもりで」
Mさんはにやにやしながらそう答えた。
他の人は何とかなるかも知れないが、ボクとUは、“まだ”新人扱いだ。それなのに、一日に二人分働けと……。
(ムチャを言いやがりますね)
「まあ、分かってると思うけど、キツイのはH君とU君だ。頑張ってね~」
その時の上司の顔に怒りを感じたのは言うまでもない。
と、こんなことがありました。
まあ、その後も、ムチャばっかり言いやがって、心身共にズタボロに……。
怒られた回数も数知れず。
(ノ`´)ノミ┻┻ がっちゃ~ん!
とやりたかったですね。
ちなみに、この時、ボクの上司は、
もし違ったら「怒るよ」or「殴るよ」※1
と何度か言ってました。
まあ、その事が原因(?)で辛くなり、精神科を受診しました。
そしたら、
「(※1)はパワハラです」
とバッサリ……。
えっと、前フリが長くなってしまいましたが、言いたいことは、
お互いに気付かないで“パワハラ”が日常的に行われているみたいです。
あれ? と思ったら、そっち方面の団体に相談したほうが良いでしょう。
まあ、ストレスは万病のもとなので、体調管理もしっかりと。
ライシンさんも大変でしたね……(^^;
一日に二倍の仕事こなすとか、それでいて残業禁止……
やっぱり、どこの会社でも色々あるみたいで……;
とりあえず、本当に体調だけは崩したくないんで、
管理の方は徹底したいと思います。
ありがとうございます(^^b